考えすぎてのぼせたライチは一足早く寝室に連れて行かれた。
「いくら温泉好きだからって、のぼせるとかうける」
そう言ったオツキも数十分後、のぼせてポリスに回収されたのち寝室に詰め込まれた。
明日の昼にはコテージを出て学校行きの汽車に乗る。休みはまだ数日あるけれど、ゆっくりと近付いてくる試験の準備をみんなしたがっていた。
試験が終わって、クリスマスが終わって、年を越したらすぐに3年生は卒業してしまう。
「なんだか、寂しいねえ」
暖炉の前でスープを飲みながらマキナが言った。
ポリスが頷く。他は全員、与えられた寝室で寝てしまっている。
せっかくの雪山なのにずっとコテージにいて動いていないせいか眠れないマキナと、同じ部屋にいる奴が二人ともタオルを巻いただけの姿でベッドに入っているという現実から逃げたいポリスだけがここで時間を潰していた。
「俺はそんなに…ああでもライチ先輩が卒業するとからかう相手がいなくなるから、つまらないかも」
「それが寂しいってことだよ」
一緒にいられるのはあと数ヶ月。こんな旅行は最初で最後かもしれない。
年齢も寮も違う謎の集まりがうまく回ってきたのはきっと奇跡のようなもので、ライチとキーコが卒業すれば成立しなくなってしまう気がした。
「ポリスくんはまだ中等部だし、実感ないかもしれないけど」
「先輩も来年には卒業するんですよね」
「うん、するね」
「しないってわけにはならないんですか」
冗談で言ったのに、やわらかく「ならないね」と返されたポリスは急に寂しくなった。
ライチとキーコが卒業して、マキナが卒業して、キーが卒業して、ようやく自分の番がやってくる。
そのときにもまだ交流があるかはわからないけど、自寮の後輩のカヤノは大丈夫だろうか。寂しくはないんだろうか。
卒業なんてまだ先の話だったのにいつの間にか近付いてきていた。
「寂しいね」
しんみりとした空気になってしまう。昼間はあんなに楽しかったはずなのに、雪の中にいろんなものが吸い込まれた気分だ。
「寂しいですね」
ライチが卒業することだけが寂しいわけじゃない。だけどマキナには伝わっていないだろう。
黙ってしまうと聞こえるのは雪の音だけだ。学校でも聞いてるはずなのに、ここの雪はどこか違う音がした。
目が覚めると、真っ裸だった。
妙な解放感。自然との一体感…なんだろうこれは。確かポリスと一緒にスキーをして温泉に入って……その先がどうしてもオツキには思い出せない。
どうしてかわからないが膝から下がひりひりする。
「……服着るか」
鞄はコテージに入ったときに部屋まで運んでもらったはずだ。
だからどこかにあるはずなのだけど、ベッドから上半身を上げた状態では見つからない。
仕方ない。どうせ自分しかいないのだから出たとしても大丈夫だ。たぶん。
そっと布団から出る。薄暗い中ではなかなか見つからない。
転びそうで怖いなと慎重に踏み出した先には間接照明のコードがあった。
ずるりとオツキは転ぶ。その際にライチにかかっていた布団を掴んでしまっていた。
「……オツキか」
「あれ、え、何であんたも真っ裸」
「のぼせ」
「襲われるぅぅぅ!!」
声がコテージ中に響き渡る。起きていたポリスとマキナはもちろん、他の部屋で休んでいた全員が彼らの部屋に集まった。
「……いや、オツキお前何してるんだ」
「ライチ、あの、そういうことは二人っきりでした方がだな」
「待てキリコ違うとりあえず服を」
「あ、はい呼びました?」
「キー先輩、たぶんキーコ先輩のことですよ」
「俺も!服!誰か!!」