痛いの痛いの - 2

(信仰は我ら人間のために)

夢を見る。辛くて悲しくて決して救いなんてない。幸せな結末は用意されていない夢。
女の人が泣いている。男の人も泣いている。二人を囲むように黒いローブを着た数人の男女が立っている。

「幸せになれないことはわかっている」

泣きながら男の人は言う。とっくにわかっていたことだ。彼らは幸せになることは出来ない。
それがこの世界の決まりだ。ルールに抗うことは出来ない。

「だけど幸せになりたかった」

わがままですね、と私は呟いた。
途端に世界が崩れる。地面が無くなり私は宙にふわりと浮いて、またはくらりと落ちて、現実に戻ってきた。

「わー、まだ夜中2時」

起きるはずの時間はもっと先だ。嫌な時間に目覚めてしまった。草木も眠る、丑三つ時。
本当は植物たちは呼吸をしているはずなのに、部屋にある観葉植物はみんな死んでいるように黙っている。
植物が話すわけはないけど、太陽が出ている間と月が出ている間では何かが違う。昼間は確かに話しているのだ。たぶん、私にはわからない言葉で。

「……喉渇いたな」

寝直す前に何か飲もう。私がベッドから立つと、パキラの葉が大きく揺れた。
あれが来た。私は喉の渇きを忘れてカーテンを開けた。

「寝ていたのか」
「さっき起きました」

窓の外に浮かんでいるのは緑色の髪をした悪魔。私がさっき見た夢で泣いていた男。そして、前世で先輩だった人だ。
もう中学を卒業する歳なのに前世なんて馬鹿らしいだろうか。それとも夢を見すぎの痛い子だろうか。
私が友達から「深夜にちょくちょく悪魔がやってくる」なんて言われたら、たぶん爆笑する。
でもこの悪魔はここにいる。夢でも幻でも何でもなく存在するのだ。

「今日はどうかしましたか」
「サンザシとヒイラギに用がある」
「好きに取っていってください」

サンザシはともかく悪魔がヒイラギに触れられるのか前に聞いたことがある。人間だったから大丈夫、となんとも曖昧な言葉が返ってきたっけ。
この悪魔はコミュ力が低い。前世でもそうだった気がする。
はっきりとは覚えていないけど、確か私と同じ所属の人とか女の人にもコミュニケーション不全かとからかわれていたはずだ。
思い出せることは少しだけ。それも夢を経由してだからか、ぼんやりとしているし間違って覚えたこともあるかもしれない。
窓を開ければヒイラギの葉を集める悪魔が見える。なぜか笑えるのはヒイラギが魔除けと言われているからだ。
だいたい、あのヒイラギは私が悪魔避けのために植えたものだというのにその悪魔が採集していくなんて。
日本の教会で悪魔は祓えない。もうロシア正教ぐらいでしかやらないのだとシスターは言っていたっけ。

「うわ、いない」

少し考え事をしている間に悪魔は去ってしまった。せめて一言言ってくれればいいのに。
後頭部に貼ってあった謎のシールのことを教えてあげようと思ったんだけど。あれ、何だろう?



(どこかのだれかと)

「すまないな」
「謝って済むなら警察は要らないんですよ、ライチ先輩」

そんな顔をしないでよ。
殺したくなるじゃない。
12.12.11. 初出
13.06.10. up

痛いやつ第二段。ほぼカヤノちゃん。
見切り発車だから終点がどこかはよくわかってないです結末ください。
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