(ポリスとマキナ)
何かの手違いか運命の悪戯かパッケージにミスがあったのか、ホラーだと思ったらドMの女が性行為をするシーンばかりの映画を俺と先輩は見ていた。
なんか、違う。かといって途中で止めるのも違う気がして、数人分の行為を見ることになった。
「なんで出る女の人みんな被虐趣味なんだろうね」
「そっちの方が話作りやすいからですかね」
国際的な賞を貰ったはずの作品からは安っぽい喘ぎ声が聞こえてくる。先輩が寮の人にあらぬ疑いをかけられないように、音量を少し下げた。
ついでにこの無意味なシーンも飛ばしてやろうかと思ったけど、先輩が見ているのでやめた。
「うわあ、ファザコンだからって実父と」
「口に出したら破壊力増しますね」
先輩はいつもと変わらない。ホラーとして見ているらしい。
こういうのに女性は耐性が無いものだとばかり思っていた。世界でこれ以上汚らしいものは無いというような扱いをするんだとばかり考えていた。実際、同年代の女子はそんな感じだ。
だったらこの人が特別なんだろうか。表情変えることなくこんな映像を見られる先輩は何か違うんだろうか。
「あ、ポリスくん急にグロくなったよ」
「え?」
画面を見ると、歯医者の診察台に女が座っていた。口の中に有り得ない破壊力を持った器具を突っ込まれている。
血が飛び散るシーンで満足げに笑う先輩は俺と同じ趣味をしていた。じゃなきゃ年下とはいえ男子生徒を夜更けに部屋に入れたりはしないだろう。
「歯医者怖いですね」
「そうだね、口って弱点を人に晒すんだもんね」
物語はクライマックスに突入した。しかし俺と先輩は歯医者トークを続ける。
予想出来ていた展開がそのままなぞられていくのを見るよりもグロテスクな話をする方が楽しい。それに先程までは感想を言うだけで話すことは出来なかった。その分を取り返すように、俺は先輩の言葉を聞いて返事をした。
ラスボスを残して出て来た登場人物はみんな死んだ。風呂敷広げすぎたんだろうなあと呟けば「だろうね」と同意された。
「前に見た映画もこんなんだったよね」
「ああ、主人公以外目が見えなくなるやつ」
「最初の発症者が日本人の」
あれも急に必要あるのかわからない性行為があった。どの層に受けたいための表現なのか俺にはわからない。興奮出来る男もいるんだろうけど、俺はそれよりも診察台に拘束されて血を撒き散らす女の方がよっぽど……あ、まずい。背筋がゾクゾクする。変なスイッチが入った。
手を伸ばせば簡単に先輩を腕に抱えることが出来た。可愛い後輩としか考えてないんだろう、先輩は拒否しなかった。それどころか頭を撫でてくる。
「眠くなったの?」
「……はい」
「じゃあ寝ようか」
先輩は俺を持ち上げることなんて出来ない。でも俺は先輩を運ぶくらいのことは簡単に出来る。そっと彼女を抱え上げてベッドの上に寝かせた。
「なんだかお姫様みたい」と笑う彼女の隣に俺も横になる。
「おやすみなさい」
「あ、おやすみ…?」
起きたら謝ろう。でも今は何も言わずにこのままで寝ることにした。