高等部3人がわちゃわちゃ

「マキナー、お客さーん」
「え、客?あー、今行く」

予習復習を終えてさあ寝るかというとき、自寮の男子がわざわざ私の部屋までお客さんとやらを連れてきてくれた。
こんな時間に誰だろう。同じ寮の子なら彼が案内しなくても私の部屋に入れるはずだ。だから他寮生なのは間違いないけど、私は他の寮の友達は少ない。
その少ない友人たちの中で唯一部屋に入るのは同じ趣味を持った可愛い後輩だが、彼がこんな時間にやってくるとは思えない。
なんか変なことでも起こってるんじゃないかと思いながら扉を開く。
仏頂面のキーコ先輩と笑顔のライチ先輩が立っていた。

「帰ってもらって」
「やだなあ私とマキナちゃんの仲じゃないか」
「入るわ」

ライチ先輩のとんでもない発言に驚いている間にキーコ先輩が私の部屋に入る。
背の高い二人をどうやって追い出すか考えていると、背後からライチ先輩にホールドされた。どうしたんだこの人。

「なんか俺邪魔っぽいから戻るな。おやすみマキナ」
「待って戻らないでせめてライチ先輩だけでも連れて帰って」
「無茶はしちゃ駄目だぞ」

変な誤解をしたまま彼は談話室に戻ってしまった。申し訳ないと共にどうしても誤解をときたいのだがライチ先輩が邪魔だ。ええい離せと暴れてみるがびくともしない。
ライチ先輩は声を上げて笑ったあと、私を抱きかかえた。扉が閉められる。
使い魔と趣味の勉強にしか興味がない先輩が、さっきの男子のようなことを考えているはずがない。キーコ先輩もいるんだし。だからそういう18禁方面の心配をしているわけではないのだけど何となく不安になる。

「マキナちゃんはいつもよりちっちゃいね。可愛いー」
「いい加減離してくださいキーコ先輩」

ん?私をホールドしているのはライチ先輩だ。だけど私はキーコ先輩の名前を出した。いつもこういった冗談を言ってくるのはキーコ先輩に決まっている。
そのキーコ先輩は椅子に座って、私とライチ先輩を見ていた。心なしか眉間に皺が寄っている。
嫌な予感に限って当たるものだ。私はライチ先輩の抱きつきから何とか抜け出す。そして逆にライチ先輩の肩を掴もうとして、無理だったので手を取った。

「キーコ先輩、ですか」
「当たり」

ならば、さっきから黙っているキーコ先輩はライチ先輩なのだろう。
私をからかうためにこんな手間の込んだことをしたんだろうか。もしそうならこの先の交友について私は考え直さなくてはいけない。

「……授業でやらかした」
「取り替えの授業でライチが有り得ないくらいの魔力を使ってね、クラスみんなこうなったんだよ」
「先生は治してくださらなかったんですか?」

いくら白朝顔が他寮よりちょっと浮いているとはいえ、こんな話が入ってこないわけがない。
それにこの二人は色んな意味で注目されている。中身が取り替えられたなんて面白い話は二人のファンが黙ってはいないだろう。

「俺は術者だったから影響ないと思われた」
「私は寝てたせいで全く気づかなくって」

後から先生に行ったら自然に戻るまでほっとくってさ、と笑顔でキーコ先輩は言った。笑顔なライチ先輩ってレアな気がするのだが、なんかそれを楽しむ余裕がない。
事情はだいたいわかった。次の問題はどうして先輩たちが自分の寮ではなく私の部屋に来たかだ。

「絶対誤解されましたよあれ」
「いやー、最初は体に合わせた寮で過ごそうって思ったんだけどさ、赤百合のライチのファン凄いよ。怖いよ。このチャンス逃すかとばかりに追ってきた」
「こんなキリコは貴重だって俺も追われた。赤百合と青桜には敵しかいない。黒薔薇は遠い。白朝顔しかないだろう」

自分で言うのもあれだが、この寮は異性より勉強を愛しているタイプの方が多い。
白朝顔でもこの二人の人気は高いけど、それは研究対象的な意味を含んでいる。

「キーコ先輩はキーちゃんのとこに行くとばかり」
「ポリスが前に、お前の部屋には簡易ベッドがあると言っていた」
「魔法で出せればいいんだけど、勝手がわからなくて使えないんだよ」

だからマキナちゃんのとこに来たと言われれば、はいそうですかとしか返せない。
可愛い後輩のポリスくんには、女の部屋について他の人に話しちゃいけないとその内伝えよう。

二人を簡易ベッドに寝かせて私はベッドに寝るつもりだった。しかし簡易ベッドは所詮簡易、大きめの二人が寝られる余裕はない。
だったら私が簡易ベッドに寝るかと立つ。けれどすぐに誰かの腕に抱えられてしまった。

「せっかくだし一緒に寝よう」
「どこがせっかくなんですか」
「ライチはもう一人で寝ちゃったし」

見ればベッドのど真ん中でライチ先輩は寝ていた。体はキーコ先輩のものとはいえ、寝ている人を動かすのは難しい。
ただでさえ本日何度目かわからないホールドをキーコ先輩にされているのだ。
抜け出そうと思ったが今回はどうやっても抜け出せない。体は細いのにどれだけ力が強いんだこの人は。

「マキナちゃんおやすみー」
「おやすみじゃないですって離してください本当に!キーコ先輩!こら聞こえないふりしない!!」

どれだけ騒いで暴れてもキーコ先輩は離してくれなかった。
明日は休日で授業はない。だから完徹しようとしたけど予想以上に私の体は疲れていたらしく、いつの間にか眠ってしまっていた。



眩しい。カーテンに隙間が出来ていたせいで私は起きてしまった。時計を見ればまだまだ寝てもいい時間だ。
二度寝万歳。そう思って目を閉じて、謎の温かさを背中に感じることに気づいた。
ああそうだ、昨日キーコ先輩とライチ先輩を泊めたんだっけ。そして私は抱き枕代わりにされた。
キーコ先輩が寝ている間に抜け出してやろうと思ったけど、なかなか抜けない。体を動かしている内にキーコ先輩が起きてしまった。

「ん、マキナ……」
「おはようございま……はい?」

私のことを呼び捨てにした。え、ライチ先輩?もう戻ったの?本当に?
中身も外見も正真正銘のライチ先輩だとわかると恥ずかしくなる。先ほど以上に必死に逃げようとしているのにライチ先輩の腕は外れない。

「ライチ先輩起きてくださいそして離れてください今すぐに!」
「駄目、腕痺れた。あと眠い」
「待て、寝るな、いや寝てもいいからその前によけてください!!」

いつの間にか起きたのやら、キーコ先輩はくつくつと笑っている。見てるな助けろ。

先輩が二度寝から起きるまでにはこんなことどうでもないと悟りを開けていればいいなと思いながら、私は無駄な抵抗を続けた。
12.11.21. 初出
13.06.10. up

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