クリスマスに先駆けて

「モテる男は辛いな?ライチせんぱーい?」
「それは自分のことか?オツキ」

森の奥にある、ライチの隠れ家とも呼べるログハウスに響いた姿現わし独特の音。
現れたライチはそのままソファに倒れ込んだ。

「こんなに人に追い掛けられたのは初めてだ……」
「アンタは今年最後だからな、高等部。あーそれにしても疲れた。ライチに会えて良かったわ。逃げても逃げてもキリがねぇ。中等部はまだ姿現わしさせてもらえないしよ」

ブツブツ文句を言いながらオツキもオツキで手近な椅子に腰掛ける。
そろそろクリスマスパーティー参加のお相手を決めないと、と学校中が受かれモード。男子は一人での参加も可能だが、女子は相手がいなければ参加出来ない。一昔前は男からの誘いをひっそり待つ女子も、今日では自分から誘いをかけるようになっていた。
ライチとオツキは、その犠牲者である。

「あー面倒くせぇ。ポリスは仲のいい後輩の女捕まえたらしいが、正直俺はぼっち参戦でも構わないんだけど」
「オレも普通にその予定だった。毎年クリスマスパーティーはご馳走を食べて、肉をタカにあげるためだけに存在していたのだが……。何故こんな目に。オレは何かしたのか?」
「いや自分が普段からモテてることにいい加減気づけ。お前、頭可笑しいけど顔だけはいいからな」
「別にオレは可笑しいことなど何もしてないが」
「会話しろよ」

タカと戯れ始めたライチにオツキは溜め息。無自覚ほど恐ろしいものはない。

「お前、どうするんだ?相手決めないと追い掛け続けられんぞ」
「決めないとならないのか……。ふむ」

ライチは少し考えたあと、タカに向かって杖を振った。ポンッという音を立てて現れたのはくせっ毛で黒髪の青年。

「タカ、女装とかどうだ?」
「ふざけんなよライチ。人型に勝手に変えるな!」
「わりと本気だ」
「頼むから話を聞いてくれねぇ?」

その青年はタカの人の形らしく、オツキは赤百合の魔力の強さに純粋に感動した。本当に魔法で何でも出来るのだと赤百合は証明してくれる。

「お前ホントに元は普通の人間だったのか?」
「何がいいたい」
「いや、他意はねぇよ。普通に凄いなってだけだ」
「……そう、か。ありがとう、と言うべきか?」

自然なようで不自然にライチがオツキから顔を背けるとタカが吹き出した。

「おい、タカ」
「ふふ!オツキさん、ライチ照れてるんですよ。普段純粋に褒められたりしないから!」
「へぇ。お前にも照れるとかあったのか」
「オレは人形ではない。感情くらい持ち合わせている」
「拗ねてるぞー」
「く、黙れタカ!」
「人型に勝手に変えやがったのはお前だろ、ライチ」

ぐうの音も出ないとは、まさにこのこと。しかめっ面で黙り込んだライチに、タカは再び笑い声をあげた。

「お前、この鷹といるときだけは表情豊かだよな。人間嫌いなのかよ」
「別に嫌いではない。オツキはそれなりに好きな部類だ」
「そういうことは聞いてねぇよ」

話しながらライチが軽く杖を振ると、青年の姿はそこにはなく、いるのは猛々しい鷹。本来の姿に戻るなり、タカは窓から飛び出していった。

「お前、どうすんだよ」
「何がだ」
「相手」
「そうだな……。あぁ、キリコ辺りにでも頼もう。駄目なら逃げ続けるだけだ」

必要の部屋に駆け込むのもありかもしれない、などと考える。意外と逃げ道はありそうだ。

「キリコ、ねぇ」
「今度は何だ」
「あれだろ?あのブルー・ブロッサムの女にモテる女」
「女にモテるかは知らないが、ブルー・ブロッサムではある」
「何、好きなのか?お前」
「好きか嫌いかで言うならば好きな部類だが」
「ちげーよ!恋愛的な意味だよ。女としてみてんのか?」
「あぁ、そういうことか。ないな。今まで一度もない」
「想像通りすぎて逆にビビるわ。恋愛したことあんのかよ」
「そのくらいならある。この世界を知る前だが」

カラン、とオツキの杖が床に落ちた。
この堅物が恋愛だと……!?想像が出来ない。硬派が服着て歩いてそうなライチが恋愛!想像しただけで面白い。なんだ、それは。

「そんなに驚いた顔をされてもな。オレだって人間だ」
「ライチ、お前今すぐ誰か好きになるか付き合うかしろ!ちょっと見たいわ」
「無茶すぎるだろう……」

イキイキとし始めたオツキに眉を寄せるライチ。しかし余計なことを話すものではなかったと後悔するしかない。

「手始めに、好きなタイプは?」
「………年上だ」
「性格は?」
「明るくても、大人しくても。だが前向きな人がいいとは思う」
「誰か周りに当てはまる奴いねーの?」
「いない。いい加減にしろ……」

うんざりしながらも律儀に答えるライチからネタを発掘しようと必死なオツキ。
ライチはもうこれは仕方ないとばかりに、キリコにどう交渉すれば穏便に済みそうかを考え始めた。
12.12.23. 初出
13.06.10. up

10日くらいに書いてたんだけどすっかり忘れてたよね。
ところで吐きそう。

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